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はじめてのリラックスパフォーマンスを終えて

2月25日、リラックスパフォーマンス「白鳥の湖」&「迷子の青虫さん」富山公演が終演しました。

 

終演後、「迷子の青虫さん」ピアノの小田桐恵子さんを囲んで。

 

本公演は、私たちにとって初めての「リラックスパフォーマンス」形態によるバレエ公演でした。

特設サイトをご覧になった方もいると思いますが、リラックスパフォーマンスは、舞台鑑賞が難しかった方々も気軽にバレエを楽しめるよう、通常のバレエ公演より少しだけリラックスした雰囲気で行う公演形態です。

 

劇場での舞台鑑賞には、暗黙の了解として様々なマナーが存在します。上演中に席を立ってはいけない。おしゃべりをしてはいけない。自閉症やADHDのある人々やそのご家族にとっては、これらのマナーが大きな障壁となり、結果劇場での芸術鑑賞から足が遠のいてしまっている現実があります。

 

そのような人々に気楽に舞台を楽しんでもらおうという趣旨のもと、リラックスパフォーマンス(原語はRelaxed Performance)は英国の演劇界で初めて実施されました。

 

バレエ団ではスコテッシュ・バレエやノーザン・バレエがすでに取り組んでいる他、バーミンガム・ロイヤル・バレエもこの2月の「眠れる森の美女」で初めてリラックスパフォーマンスを組み込んでおり、バレエ界においても広がりを見せています。

 

私たちスターダンサーズ・バレエ団は、これまでワークショップやアウトリーチなどを通して、障害のある方のバレエやダンスへの「参加を促す活動」に積極的に取り組んでまいりました。

 

そこから一歩進め、これからは「参加」だけではなく、私たちのメインの活動である「公演」にも来やすい環境づくりをしたい、つまり「鑑賞を促す活動」を始めたいと考え、リラックスパフォーマンスの実施を決めました。

 

 

富山でのリラックスパフォーマンスでは、具体的に以下のことを行いました。

 

① 照明を完全に落とさない

暗闇は、自閉症の方やADHDのある方にとっては大きな恐怖になるものです。通常のバレエ公演では客席の照明を完全に落とした状態で上演しますが、リラックスパフォーマンスでは、20~30%の照明レベルを維持して行いました。

 

② 上演中も客席への出入りを自由に

上演中はロビーに出られないことが通常のバレエ公演でのマナーですが、指定されたドアから自由に出入りできるようにしました。疲れたら、飽きたら、そしてトイレにいきたくなったら、自由にロビーに出ることができます。ロビーから客席内に戻るのも自由です。

 

③ 自由席エリアを作る

隣に知らない人がいることに慣れない方や、すぐにロビーに出られるようドアの近くに座りたい方などのために、誰でも利用できる自由席エリアを客席後方に設置しました。上演中にロビーに出た方も、後方の自由席エリアがあるので気軽に戻ることができていたようです。

 

 

④ 多少の話し声や移動を受け入れるリラックスした雰囲気づくり

上演中の話し声や移動は、通常、他の観客から煙たがられてしまうものです。小さな子どものいるご家庭では、上演中のおしゃべりで周りに迷惑をかけてしまうことが不安なために劇場に行きにくいという声もありました。今回のリラックスパフォーマンスでは、公演の告知の段階から、多少の話し声や移動が想定されることをご理解した上でお越しいただくよう、公演チラシや特設サイトで呼びかけていました。事前にそのような趣旨であることが分かっていたため、気兼ねなく鑑賞することができたという声も聞かれました。

 

⑤ ロビーには休憩エリアの設置

上演中ちょっと休憩したい方や客席では落ち着かないという方のための「休憩エリア」をロビーに設けました。休憩エリアには、理学療法士の資格を持つスタッフが常駐し、様々な障害のある方に対応できる体制をつくりました。また、舞台の様子を見ることができるモニターエリアも設置。客席の環境に慣れないお子様などが利用されていました。

 

 

⑥ 上演前の解説でマイムなどを説明

開演直前には、総監督小山が「白鳥の湖」で使われるバレエのマイムの解説と、上演中の注意について説明を行いました。

 

解説中の小山久美。解説が分かりやすくなるように、隣で「白鳥の湖」道化役の関口啓がサポート。

 

 

富山公演は、日本のバレエ団として初めて行うリラックスパフォーマンスとなりました。

小さなお子様のいるご家族、特別支援学校に通う方、障害者施設に入居する方など、さまざまなお客様にお越しいただきました。

「子どもも大人もいっしょに楽しむみんなのバレエ」と銘打った本公演が、その言葉通りにあらゆる方にお楽しみいただけたなら幸いです。

 

3月25日の大津公演では、特別プログラムとして奈良県立高等養護学校のダンス部のみなさんのパフォーマンスも上演する予定です。

奈良県立高等養護学校との出会いは、実はSDBが2016年に全国の特別支援学校1004校を対象に行ったアンケート。そのなかでひときわ熱心な回答をお寄せくださったのが奈良県立高等養護学校ダンス部を指導している武井先生でした。

 

公演まであと1ヵ月、ダンサーだけでなくダンス部のみんなも稽古に励んでいます。

 

奈良県立高等養護学校ダンス部の皆さんと。

 

まずは次の大津公演ですが、私たちの公演を契機に、日本にリラックスパフォーマンスが定着していくよう、今後も活動を続けてまいります。

バレエやその他の舞台芸術が、もっと多くの人に届くように。

 

 


Instagramでは、富山公演の様子も続々更新中!

大津公演チケット販売中!
リラックスパフォーマンス「白鳥の湖」&「迷子の青虫さん」
3月25日(日)びわ湖ホール 中ホール
詳しくは特設サイトにて

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