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「コンサート」渡辺恭子インタビュー

「コンサート」で、最も目が離せないキャラクター「バレリーナ」を演じるのは渡辺恭子。

昨年9月の初演時には、そのコメディエンヌぶりに当たり役との呼び声高く、その評価をもって今年の舞踊批評家協会新人賞を受賞した渡辺に、改めて注目していただきたいシーンや裏話などをたっぷりと語ってもらいました。

前回のインタビューはこちら

 

 

前回に続き今回も「バレリーナ」役での出演となります。役柄について教えてください。
 
バレリーナというと物語のお姫様や気品のある女性を思い浮かべますが、この作品に登場するバレリーナは“マッド・バレリーナ”とも言われていて、登場するキャラクターたちを驚かせたり翻弄したりする役どころです。

 
一般的なバレリーナ像のイメージが異なりますよね。演じる上で、気を付けていることはありますか?
 
とてもおもしろくてユーモアがある作品なので、与えられた振りを誇張してみたくなる瞬間が出てくるのですが、いかにナチュラルに表現するかということ。

ベンさんの指導の中で特に印象に残っているのが、マイムをするときは必ず間が必要だということです。
これは全体に対しての注意でもあったのですが、相手がいて会話が成り立つように、誰かのアクションに対して、それを気づいた瞬間があってから、リアクションをする。日常では当たり前にしていることでも、作品として音楽の中でやってみると、焦ってしまったり、やらないといけないという気持ちで少し先行してしまう瞬間がありますが、今自分は相手の言動に反応して動いている、という意識を大切にしなさいとおっしゃっていたのが印象的でした。

 
演技の部分について、ほかの作品との違いを感じることはあるのでしょうか?
 
どの作品でも、演技に対する考え方は同じなのですが、例えば「ジゼル」だと登場人物も多く舞台装置や衣裳のおかげで雰囲気や空気ができあがっているので、ナチュラルに演技をすることができるのに対して、「コンサート」は衣裳も簡素で大きな舞台装置もなく、登場人物も限られていている。シンプルに描いている作品だからこそ、演技や会話、ひとつひとつの動きがより浮き出てくる気がします。その中で焦らず、間を作って表現することの難しさを感じています。

 
以前のインタビューで、フランス語でセリフをいれながら踊るとうまくいったと話していましたが、具体的に教えていただけますか?
 
例えば、最初のコンサートの場面で、急に一人で羽ばたき始めてハズバンド役を誘うというシーン。
振りをもらったときの印象では、「おいでよ」や「join」というワードをイメージしていました。でも実際にその表現でやってみたらニュアンスが違ったようで。

ベンさんとはフランス語で会話をしているのですが、「(友達や親しみを込めた相手に向けて使う)おいで」を意味する「Tu viens」とベンさんが言っていたので、その言葉を思い浮かべながらやってみたんです。そしたら褒めていただけて。私自身もしっくりきて、それからそのシーンは「Tu viens」をイメージしてやっています。

日本語で話すときとフランス語で話すときに声のトーンが変わると言われたことはあったのですが、同じ意味でも言語によって出てくる表現が変わってくるというのは私の中でも驚きでしたね。

 
ピアノコンサートのシーンにはバレリーナ以外にも様々なキャラクターが登場しますが、注目して観ていただきたいと思うキャラクターはいますか?
 
たくさんいる・・・!(笑)
まず、2人の女の子たち。バッグの中のキャンディを探して音を立てるんですが、私も小さい頃、舞台を観に行くと「あの人誰?」とこしょこしょ話をしちゃったこともあるので、ああやっちゃったな~と共感します。

(左から)小澤倖造・東真帆・西原友衣菜

 

それからハズバンドとワイフ。コンサート会場で、ワイフの方は素敵な女性として平然を装いながら、ハズバンドのことを思いきり叩いていて(笑)お客様にも共感できる部分があるのではないかなと思います。

あと、劇場で席を案内する係の人まで描かれていたことが個人的にはツボで。注目してもらいたいです。

(左から)東真帆・小澤倖造・渡辺大地・仲田直樹・西原友衣菜

 
初めてこの作品を観たときの印象を教えてください。
 
私が初めて「コンサート」を観たのは、フランスで、バレエの先生に誘われて観たパリ・オペラ座の舞台でした。
最初のピアニストさんの登場からすでにおもしろくて、声出して笑っていいのかな・・・と一瞬ためらったら、後ろからマダムの大きな笑い声が聞こえてきて(笑)ああ笑っていいんだ、と思いました。

一番印象に残っているのはやはり6人の女性の踊り。バレエあるあるが詰まっていて。
バレリーナたちがおもしろおかしく演じている姿がただただ楽しく、でもつま先やラインはすごくきれいで。こんな融合の仕方があるんだと思いました。

 
実際にこの作品に出演することになり、作品に対する印象は変わりましたか?
 
いざ自分が作品の中に入ってみてみると、当時はあまり記憶に残っていなかったレインのシーンがとにかく美しいことに気づきました。ショパンの音楽にあわせ、ステップとしてはほぼ歩くだけなのに、すべてが計算されつくしていて、侘しさもあって。
どこでどのようにすれ違うかもひとりずつ細かく決まっていて、傘がいつ閉じたのかもわからないように計算されていて。いつも観ていて夢中になってしまうシーンです。

 
リハーサルの裏話など教えてください。
 

帽子を選ぶシーンは、演じていて楽しくて好きなのですが、実際にやってみて一番苦戦したシーンでもあります。
前回の公演のとき、実際にかぶる帽子で練習できたのが本番間近になってからで、ギリギリまでとても苦戦しました。
自分でかぶるのではなく、後ろからかぶせてもらうのですが、帽子の向きも計算しないといけないし、客席を鏡として演じていますが、もちろん鏡はないので感覚で演じるしかなくて。

特に苦戦したのは最後の帽子。かぶった瞬間にすぐ大喜びしないといけないのですが、髪の毛も下ろしているので滑ってしまうんです。
ぎりぎりまで練習していたら、ベンさんが落ちないかぶせ方を教えてくれて。それが結構力業で、おでこまでぐっと押し込むかぶせ方だったのですが(笑)本番もそのやり方で久野くんが一生懸命かぶせてくれて無事成功しました。心の中で「できたー!」って喜んだことを覚えています。5月公演でも頑張ります(笑)

(左から)小澤倖造・久野直哉・渡辺恭子

 
最後に、お客様へメッセージをお願いします。
 

「コンサート」はとても楽しい作品ですし、日本で上演される機会があまり多くないのでこの機会にぜひ一度ご覧いただきたいです。
皆様もピアノのコンサートにきたお客様のひとりとして、ぜひ共感しながら観ていただけたらと思います。
劇場でお待ちしています。


■公演情報
「The Concert」
スコッチ・シンフォニー/牧神の午後/コンサート
2023年5月13日(土) ・14日(日)
テアトロ・ジーリオ・ショウワ
公演詳細はこちらから

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