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ローザンヌ国際バレエコンクールの思い出(前編) 池田武志・石川龍之介・堀沢悠子

毎年1月~2月にスイス・ローザンヌで開催される「ローザンヌ国際バレエコンクール」。
日本でも”若手ダンサーの登竜門”として、バレエ関係者以外にも広く知られているコンクールです。

コンクールの決戦の模様は、日本でも例年5月~6月頃にNHKにて放送されています。
2023年はコンクール創設50周年を記念して、7月1日(土)午後4時~、NHKのEテレにて「ローザンヌ国際バレエコンクール 50周年特番」が放送予定とのこと。

そこで今回のブログでは、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場したことがあるダンサーに、出場時のエピソードについてインタビュー!
今だから話せるエピソードや、コンクール出場を目指す若手ダンサーの皆さんへのアドバイスなどを話してくれました。
まずは前編として、池田武志(2009年出場)、石川龍之介(2011年出場)、堀沢悠子(2011年出場)のインタビューをお読みください。


ローザンヌ国際バレエコンクールは出場に際してハードルが高いコンクールだと思いますが、皆さんが参加を決めた理由を教えてください。

 

池田 当時は右も左も自分の将来も分からない子供でしたが、師匠から「ローザンヌを目指してみないか」と中二の頃に言われたことで、自分もプロを目指せるのか!と初めてテンションが上がり、挑戦を決めたという記憶があります。

 

石川 毎年テレビで見ていて憧れていたのと、スタジオの先輩方も出場されていてずっと目標にしていたので、出場を決めました。

 

堀沢 バレエを本格的に習い始めた頃から憧れていて、15歳になったら私もここに出たいとずっと思っていたからです。

 

参加してみて驚いたことや、他のコンクールとの違いなどは覚えていますか?

 

池田 それまで参加していた日本のコンクールでは出場者全員が火花を散らし、その中で自分は己の踊りのつたなさにコンプレックスを抱えて押し潰されていましたが、ローザンヌでは皆国籍が違えど異国に来て不安な想いは同じ。その想いが楽屋やレッスン審査…あらゆる場面での絆を作ってくれた気がします。

 

石川 クラシックとコンテンポラリー両方のヴァリエーションを踊る必要があること、またクラスも何日間にも渡って審査されるので、肉体的にも精神的にもとてもハードだと感じたことを覚えています。

 

堀沢 それまで日本のコンクールしか出たことがなかったので全てが新鮮でした。一週間クラスを受けて審査をされながら、緊張しつつも楽しい一週間でした。また、コンクールの会場であるボーリュ劇場の床は傾斜がついていると知ってはいましたが、思ったよりもその傾斜が強くて驚きました。

 

コンテンポラリーの練習について教えてください。クラシックと比べると踊り慣れていなかったと思いますが、コンクールに向けてどのように対策しましたか?

 

池田 コンテンポラリーの世界は未知なことが多いからこそ、チャレンジ精神のみで挑めた事が結果的に良かったのかなと思います。正解が本当に分からないから全力を出せた気がするので…。

 

石川 ローザンヌに向けて国内のコンクールでもコンテンポラリー部門に出場したり、外部のクラスやジャズダンスのクラスを受講したりなど、様々なジャンルのダンスを積極的に学ぶようにしていました。

 

堀沢 中学生の時から少しずつコンテンポラリーを習っていましたが、かなり難しいヴァリエーションでした。出身スタジオの大先輩である渡辺レイ先生に指導をしていただきました。

 

コンクール出場中の出来事で、今でも特に印象に残っているエピソードはありますか?

 

池田 ローザンヌでの最初のレッスン審査が始まる前、名前も知らないロシア人の男の子と一緒に、”半端なく斜め”だと噂の劇場の舞台までコッソリ行ってペットボトルを転がし、勢い良く転がるその様に感動したことが思い出です(笑)

 

石川 角度の付いた舞台で踊るのが初めてで、慣れるまでとても大変でした。またローザンヌの街自体も坂がとても多く、劇場を出た後も良いトレーニングになっていました(笑)

 

堀沢 当時は携帯電話やスマートフォンも持っていなかったのですが、決戦前日に一緒に生活していた寮生から応援メッセージが書かれたFAXが送られてきて、とても嬉しかったのを今でも覚えています。

 

当時一緒に出場したダンサーで、いまでも交友関係が続いている人などいますか?

 

池田 当時は日本人も多く出場していましたが、同じアクリ・堀本バレエアカデミーから出場した水谷実喜ちゃん(バーミンガム・ロイヤルバレエ)や、石崎双葉ちゃん(バレエ・アム・ライン)などの戦友とは今でも関わりがあります。

 

石川 ローザンヌで頂いたスカラシップの留学先が同じ(カンヌ・ロゼラ・ハイタワーバレエ学校)だったアルゼンチン人のNahuelという同い年の男の子がいるのですが、何と寮の部屋まで一緒でした。現在彼はスイスで活躍していて、今でもたまに連絡を取ることがあります。
あと、同じ2011年に出場していた堀沢悠子ちゃんが6月から入団し、とてもびっくりしています!

 

堀沢 当時は自分のことしか見えていなくてほとんど他の出場者の方と話した記憶がないのですが、この度スターダンサーズ・バレエ団に入団して石川龍之介くんと同じ年に出場していたことを知り驚きました。

 

ローザンヌ国際バレエコンクールを目指している方へ伝えたいアドバイスやメッセージをお願いします。

 

池田 今までに経験したことのない緊張感とともに、異国での素晴らしい出会い&チャレンジに10代の心はきっと沸き立つことと思います。その素晴らしい感覚はその後のダンスキャリアに深く焼き付けられると思うので…その場に立つための最大限の情熱と、悔いのない努力をぜひ惜しまず注いでください!!

 

石川 コンクールに向けて準備するのはとても大変だと思いますが、その経験が、将来バレエ団に所属することになった後も、たとえ別の道に進んだとしても、必ず自分自身の体験として活きてくると思うので、挑戦出来る自分の環境と周りの支えてくださる方への感謝を忘れずに、全力で頑張って下さい!

 

堀沢 出場するなら賞を取りたいと思う気持ちがあるのは当然だと思うのですが、一週間の間に色々なクラスがありますので、あまり気を張りすぎず様々なことを吸収して、納得のいく踊りが見せられるように全力でバレエに打ち込んでほしいです。
自分と向き合えるかというプロセスが大事だと思うので、悔いが残らないように挑戦してみてほしいと思います。

 


プロのダンサーを目指していれば誰もが一度は憧れるローザンヌ国際バレエコンクール。経験者ならではのエピソードから熱い応援コメントまで、たっぷりと語ってくれました。
ちなみに3名ともコンクール会場である「ボーリュ劇場の傾斜の付いた舞台」について話してくれていますが、ボーリュ劇場は2019年から3年間にわたる改修工事を経て、勾配のない舞台になったとのことです。(こちらのバレエチャンネルの記事参照)

ブログ後編では、全員同じ2012年に出場した早乙女愛毬、佐野朋太郎、髙橋茉由のインタビューを公開予定です。そちらもお楽しみに!

※ブログアイキャッチ画像提供:池田武志(レッスン審査の様子)

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