バレエ団での最後の公演を控えて。池田武志インタビュー
春の気配が漂いはじめる3月、ひとりのダンサーが大きな節目を迎えます。
長年にわたり数々の主演を務め、スターダンサーズ・バレエ団の舞台を支えてきた池田武志が、今年度をもって退団します。
退団を前に、何を思いどんな景色をみつめているのか。
最後の公演となる『オール・バランシン』を1週間後に控えた池田武志に、これまでのバレエ団での思い出を振り返ってもらいました。

はじめに、3月末での退団が決まっている今、どんな想いでこのスターダンサーズでの最後の公演を迎えるのか、率直な気持ちをお聞かせください。
シンプルに《寂しい》という気持ちもありますが、やはり毎回舞台が間近に迫ると《楽しみ》な想いが溢れてワクワクする自分もいて、今はその二つの感情が混ざり合ってとても良い緊張感でリハーサルができています。
ここまで信頼して踊り続けさせてくれたバレエ団に感謝の気持ちでいっぱいです。
スターダンサーズ・バレエ団には2017年7月に入団。最初の舞台は2017年夏の『サマー・ミックス・プログラム』でした。このとき踊ったのは、デヴィッド・ビントレーの『Flowers of the Forest』とバランシンの『ワルプルギスの夜』です。特に国内バレエ団初演として上演した『Flowers of the Forest』での姿は印象に残った方も多いと思いますが、当時のことは覚えていますか?
『Flowers of the Forest』の幕開きで舞台の真ん中に立つ瞬間、「さぁ、ここから始めるぞ」という気持ちを抱いたことは今でもハッキリと覚えています。スターダンサーズに移籍してすぐに与えていただいた大役のチャンスだったので、あの頃まだ24歳の野心溢れる若者だった僕にとって本当に幸せで心躍る舞台でした。

「Flowers of the forest」(2017年)©Kiyonori Hasegawa
以降、数々の作品・役を踊られてきました。これまでご自身が大切にしてきた役や思い出深い作品を教えてください。
思い出深いのは、やはりクルト・ヨースの『緑のテーブル』です。2019年に《死》の役を初めて演じさせていただいた時の、指導のジャネット・ヴォンデルサールさんや、大野大輔さん、佐藤万里絵さん、今は妻であるフルフォード佳林をはじめ共に舞台に立ったダンサーたちと感じたあの連帯感と達成感は今でも大切な思い出です。出会えて良かった作品でした。


「緑のテーブル」(2019年)©Kiyonori Hasegawa

振付指導のジャネット・ヴォンデルサール氏と。©Kiyonori Hasegawa
2024年の『雪女』世界初演に主演させていただいたときの、ビントレーさん、パートナーの渡辺恭子さんとのクリエーションの日々も忘れられません。ビントレーさんからは、公演が終わって別れ際に「自分から色々な表現を発信してくれてありがとう」と仰っていただけたことも嬉しかったです。

「雪女」(2024年)©Kiyonori Hasegawa

振付のデヴィッド・ビントレー氏と。
そして大切な役でいうとやはり『バレエ・ドラゴンクエスト』の黒の勇者ですね。移籍してきた翌年に配役していただいてから去年8月の公演まで、本当にたくさん踊らさせていただいた役で、この役を通じて僕を知ってくださった方も多くいらっしゃると思います。役と一心同体になれる貴重な作品でした。今後、新たな黒勇者が生まれ、新たな冒険が始まるのを僕も楽しみにしています!

「バレエ・ドラゴンクエスト」(2025年)©Kiyonori Hasegawa

来週の『オール・バランシン』が最後の公演となります。スターダンサーズ在籍中には様々なバランシン作品を踊ってきましたが、今度の公演では初挑戦となる『フォー・テンペラメンツ』(両日出演)と『ウェスタン・シンフォニー』(3/8出演)に出演します。
振付指導のベン・ヒューズさんは、スターダンサーズでの最初の公演の『ワルプルギスの夜』から指導していただいていますが、パートナリング等の細かなアドバイスは常に勉強になります。バランシン作品はやはり音楽と一体になることが一番のテーマだと思いますが、そのダンサーとして当たり前の作業を高次元で取り組むことは、毎回非常にやりがいがあります。
きっと今回の舞台も、その取り組みが舞台で実を結んで楽しいものになると信じてます。

「フォー・テンペラメンツ」サンギニックのリハーサル(冨岡玲美と)
バレエ団退団後の展望について教えていただけますか?
今後も主宰するルクスバレエスタジオの指導と並行してまだまだフリーのダンサーとして舞台にはどんどん立って踊っていきますし、挑戦を続けていきます。
バレエ団の舞台も、もしお呼びがかかればいつでも駆け付けるので…そんな時がまた来れば素敵だなと思っています!
最後に、ファンや支えてくれた方々へひとことお願いします。
僕がダンサーとして舞台に立つときにいつも大事にしてるのは、まず自分が舞台にいることを楽しみ、その楽しさをお客さまと共有し、お客さまに幸せな気持ちになって欲しいということ。でも振り返ると、舞台の最後に拍手を送ってくださる皆さまからたくさんのエネルギーと幸せを僕自身がいただいてきました。
見守ってくださったお客さま、周りで助けてくれた団員の仲間・スタッフの方々に、本当に感謝の想いでいっぱいです。
『オール・バランシン』がいざ本番という時、どんな感情を抱くのかまだ僕も分かりませんが、まずはいつも通り自分が楽しんで、バレエ団での最後のひとときを皆さまと共有しながら大事に踊りたいと思います。
改めて、これまで本当にありがとうございました!
また会う日まで・・・!

2025年の「くるみ割り人形」終演後、演出の鈴木稔と恒例のハグ。

